観覧車(T)

うわー。すごい。なんだか、ハイテクな拷問器具にかけられてるみたい。
何その表現。でも確かに、言われてみるとそう見えるかも。悲鳴上げてるし。
僕は乗りたくないなぁ。
私はちょっと乗ってみたいな。
えー、・・・じゃあ乗る?
いやいや、いいよ。可哀想だし。
ありがとう。じゃあ代わりにあれ乗ろうよ。
・・・あれ?
うん。せっかくだから。
そうだね。せっかくだから。
わー。すごい。富士山が綺麗に見える!
ほんとだね。
ねえ、なんかロマンチックじゃない?観覧車で二人。
・・・そうだね。でも文学部なんだから、もっと文学的に表現してみてよ。
いいよ。ちょっと時間ちょうだい。
 
さて、君は知らないだろうけど、この観覧車はタイムカプセルなんだ。嘘はついてないよ。きっといつか分かる日が来る。君は将来・・・と言っても何年後かは分からないけど、またこの観覧車に乗る事になる。これは決して覆す事の出来ない決定事項なんだ。それで、君はあるきっかけで「あ、そういえば前にも乗った事があるな」と思い出す。きっかけっていうのはある合言葉なんだけど、要するに「開けゴマ」みたいなものかな。合言葉によって、観覧車のタイムリープ機能は起動し、今の君と過去の君は入れ替わる。その合言葉を、今から君に教えてあげる。この言葉は今と未来を繋ぐ大事な鍵になるから、決して忘れないで欲しいんだ。それじゃあ言うね。
「現在過去未来の」
じゃあこの続きは、また何年か後の未来で。
 
 
少し大人になった女が一人、観覧車でつぶやく。
 
「君を愛してる・・・かなぁ」